美島豊明インタビュー The man behind Cornelius

「POINT」全曲解説

CORNELIUSの4枚目のアルバム「POINT」収録楽曲の全曲解説です。

<1:Bug (Electric Last Minute)>

マスヤマ:僕、頭のノイズが、すごく衝撃的だったんですよ。

美島:これはレコーディング中にLogicがバグったんですよ。プレイボタンを押したら、いきなりガガガガーって始まって。それで、コレ、使おうっていうことになって。

マスヤマ:それは、小山田さんのアイデアですか?

美島:うん。

マスヤマ:じゃあ、これは偶然できた、今で言うグリッチ?

美島:作ったわけじゃなくて、偶然ですね。本当は2、3分あって、それを編集したんです。一番はじめは、「ひょっとしたら、元のデータ、全部壊れちゃってたらどうしよう。」と思って真っ青になりました。バックアップはとってあったけど。とりあえず「これ録っておこう。」って言って、DATをまわして。2回目聴いた時に大爆笑になって、「これは使える。」ってなって。

マスヤマ:そのバグは何が原因だったんですか?

美島:分からないです。リスタートしたら、直っちゃった。

<2:Point of View Point>

マスヤマ:これ、普通のシンセの音ですか? 

美島:これは「view」って言っているのを伸ばしているだけですね。このviewを伸ばすのが大変だった。(笑)ループポイントを見つけて、今みたいにストレッチとかなかったから、全部手で、こことこことでループできるって。

マスヤマ:この時、「『FANTASMA』と違ってきたな。」っていう感じはしました?

美島:僕の仕事が増えた。。。っていう(笑)。

マスヤマ:でも、それを拒否することも出来たじゃないですか。

美島:そういうのは他じゃできなくて、すごい面白かったから。まだ、そういうシステムで、みんなやってなかったし。

マスヤマ:1999年とか2000年のことですものね。仕事が増えたこと以外に、プロダクションのスタイルとしてどこが変わりましたか?やっぱリ全体に、リミックス的な発想って言っちゃっていいんですかね?

美島:そういう部分はあると思いますね。リミックス、結構やったから。2000年をこえた辺りから、感じはじめてたかな。

マスヤマ:僕、ファースト以後、2007年まで聴いてなくて、聴いたときに「コーネリアスってこんなんになったんだ!」って思ったんです。歌ものっていう感じじゃないですよね。それは最初からあったんですか?

美島:どうなんですかね。やりたいことをやってるだけですよ。流れ的に、こうなっちゃった。

マスヤマ:そういう意味では、デザインじゃなくて、ファインアートに近いですよね。「FANTASMA」までは、まだデザインっぽいじゃないですか。方向性があって、こっちでやろうみたいな。

<3:Smoke>

美島:この曲はギターソロを録るのが大変だった。すごいたくさんテイク録って、エディットしたような気がするな。多分これね、PODっていうLINE 6の赤いアンプシミュレーターの初期型で録ってます。

マスヤマ:じゃあ、誰でも頑張れば、あの音質は出せるってことですか?

美島:今なら誰でも出せるんじゃないですか?

マスヤマ:じゃあ、小山田さんが今、坂本龍一さんとかに「想像されてない音出す。」って言われるのは、そういう技術のことじゃないんですね。むしろイマジネーションの方だ。

美島:そうそう。PODの音色のエディットって僕がやってたような気がする。大体の音の傾向を話し合って、細かいところは僕が詰めて、エディットして。

マスヤマ:そういう傾向はどういう風に表現されるんですか?

美島:「ひずみがいいね」とか、相当アバウトな感じ。

マスヤマ:そのへんは、あうんの呼吸ですよね。ギターの音作りも美島さんがやってるって、ちょっと意外ですね。小山田さんはギタリストだから、職人的なこだわりがあって自分がやるのかと思ったんですけど。

美島:どうなんだろう、そこは付き合いが長いから。ライブのプリセットに関しては自分でやってたりするんですけど、レコーディングに関しては僕。ライブのアンプのセッティングとかは小山田くんが自分でやってるけど。僕はそれをだいぶ見ているから、好きな音色の傾向がだいぶ分かっているんだと思う。

マスヤマ:普通に生音に何もかませないで録っておけば、後からいろいろできるじゃないですか。そういうやり方ってしないんですか?

美島:後処理はなるべくやらないようにしてるから、やってる時に作った音で、そのままいっちゃうかなぁ、曲の方向性が見えてれば。

<4:Drop>

美島:結構バンド編成を意識して作ってるんです。で、やってみたら、難しくしすぎて、自分のギターを自分でコピーしなきゃいけないっていう(笑)。エディットでおもしろく作り変えちゃってるから。

マスヤマ:前のインタビューで「一般に手癖でやってる限りは新しいことはない」って、ちらっと言ってたじゃないですか。そういうことに、お二人とも同時に考えついてということだと思うんですけど、それはこの頃なんですか?この頃は明らかに、手癖から離れようとしてるじゃないですか。

美島:離れようとしてますね、明らかに。手癖じゃないことをやってますね。やってるうちにそうなっちゃって。自分で弾こうと思ったら、「弾けないじゃん。これ、練習しなきゃダメじゃん。」って。

マスヤマ:理屈で考えてなったわけじゃないですよね。新しいもの、聴いたことないもの、気持ちいいもの、面白いもの、を突き詰めて行ったら結果的に、音を抜いたりだとか、手癖から遠ざかった。ただの感想になっちゃいますけど、こういう変なことをやっている人って意外といるけど、例えば現代音楽とかにはいるけど、ポップでキレイに、しかもコーラスもキレイにとかっていう人が多分いないんじゃないですか?

美島:ですかね?そこのせめぎ合いがちょっと難しいですよね。うん。

マスヤマ:フリッパーズ・ギターやコーネリアスってコーラスが大きいじゃないですか。そこが他の人にはない所なのかなぁと。カーペンターズがアバンギャルドやってみたいな感じ。コーラス+アバンギャルドみたいなことは、唯一ビートルズですよね。

美島:3Dの社長が聞いたら、すごい喜ぶかな(笑)。

マスヤマ:岡さんに今度会ったら「コーネリアスは、やっぱり、ビートルズですよ。」って。

美島:そしたら、「じゃ、俺 ポールでいい?」って(笑)。

マスヤマ:あははは(爆笑)。

美島:そういうことじゃない(笑)。いや、俺はポール大好きだから。

<5:Another View Point>

マスヤマ:ローリー・アンダーソンっぽい感じのハッハッハッ。小山田さん、このハッハッハッっていうの結構好きですよね。これはなんかテーマあったんですか?

美島:いや、インストっていうのがテーマだった気がするんだよな。。。もう10年前なんで、かなり記憶はあいまいなんですよね。最近マスターの音源を聴いてみたら、やっぱり最初に録った音源の録音がよくない、って分かっちゃって。このアルバムは一年かけてて、こういう風に自分達のスタジオができて長期でやったのは初めてだったから。ま、誰も気が付いてないと思うんですけど。この曲も後の方だから、ベースとかギターの音の録り方が上手くなってるんですよ(笑)。

マスヤマ:それは具体的に言うと、どういう違いなんですか?機材の違いもあるとか?

美島:機材は多分変わってないと思うんだけど、録る時のレベルのとり方とか、コンプの具合とか。曲の方向性が出来てたら、音は最初に作り込んでおいた方がいいっていうのが、分かってきたんじゃないかなぁと。

マスヤマ:どれが初期の曲で、どれが後期って覚えてます?

美島:「point of viewpoint」が、多分一番最初だったと思う。あそこのスタジオに篭って作り始めた最初の頃だから、まだいろいろ試行錯誤ですね。

マスヤマ:この後ろで フーって言っているのは、「point of viewpoint」とかですか?

美島:後に作っているから、素材を持ってくるっていう。

マスヤマ:へんな言い方すると、組曲っぽい感じで前のモチーフが出てきてっていうことですよね。

美島:そうですね。前に使った音をあえて使ってみるとか。「FANTASMA」の一番最後の曲「GOD ONLY KNOWS」は 全部の曲を組み込んでっていうのをやったと思う。自分の曲を引っ張ってくるっていうのは、多分あそこが最初だったのかな。

マスヤマ:「デジャヴ・エクスペリエンス」って言ってる前のノイズみたいなのは、一番最初の。。。?

美島:そうです、「Bug」からの引用ですね。そういう自分内引用とかがあるから、ポップスというよりアート寄りな感じがドンドン出てきてるっていう。

マスヤマ:その頃、現代音楽に急にはまったとか、そういうことじゃないですよね?

美島:僕はずっと好きだったから、そういうのは全然抵抗なく「やろう、やろう!」って感じで。小山田くんがそれをどこから見つけてきたっていうのは、ちょっとわからない。。。アート寄りなのかなぁ?

<6:Tone Twilight Zone>

マスヤマ:コード進行のないビートだけの。。。結構長いんですね、この曲も。15秒ある。これも2001年のコーネリアスのイメージとはちょっと違いますよね。ポップスっていうよりは映画音楽。

美島:ああ、これもインストですからね。これ、虫の音をリズムに合わせるのが大変だったのを、今思い出した。単純にビートに虫が合ってるっていう風に聴こえたかったんですよ。ここで、1、2、3(虫の音)、チャーン(ギター)ね、あってるでしょ?

マスヤマ:ははは(笑)これは気づかない!これ、あわせたんですよね。

美島:あわせました。録音するよりも、それが一番大事なんだ(笑)。イントロからちゃんとあってるんです(笑)!

マスヤマ:こういう曲は、フレーズの断片みたいなものがあって、それを膨らませていくって感じですか?

美島:えーとね、これはコード進行が先だったかな。その上にメロのハーモニクスを乗せていったような気がしたなぁ。

マスヤマ:それは、その仮コードみたいなものを弾いておいて、その上に弾きながら探っていくみたいな感じなんですか?

美島:多分ね、行ったり来たりしてるから、コードやってみてメロディ乗せたら、おかしかったから、コードを変えてみるとか、メロディを変えてみるとか、そんな作業をやったような気がするから。どこが最初で、どこが終わりだか、思い出せないんですよね。

マスヤマ:なんか音を入れすぎちゃって、減らすみたいなこともやるんですか?

美島:「point」の頃は、入れすぎるってことはないですね。「FANTASMA」は、入れすぎちゃって訳わかんなくなるってことが、いっぱいあったけど。

<7:Bird Watching At Inner Forest>

美島:この曲は「次は鳥だ!」ってなって。

マスヤマ:鳥だとか虫だとか、自然音を使うっていうのは何かあったんですか?

美島:「SEをいっぱい入れよう。」っていうのがコンセプトにあったから、もうわかりやすく鳥と虫っていう。。。(笑)これも、鳥がリズムにあってるんだ。

マスヤマ:これは分かりますよね。でも、これはどうやって作ったんですか?サンプリングを音階にしているってことですか?

美島:いやいや、音階にはしてないですね。サンプリングをきれいに貼りあわせて、リズムにあうように。

マスヤマ:こういう自然の音だと拡がり感が出るじゃないですか。こういう所で、ギターソロは絶対に入れないんですね。それはもう、そういう時代っていうか。ジャズなんか特にそうかもしれませんけど、普通に4ピースのバンドがあって、順番にソロをとっていったりするのをみると、古いなぁって思っちゃいますよね。音楽の楽しみ方が技を観ているんだな、って感じですよね。ロックも完全に古典芸能みたいになってますよね、10年くらい前から。

美島:一応フォーマットが出来上がっちゃってるから。そこに乗っかっちゃうと古典芸能みたくなっちゃうからね。

マスヤマ:カタですよね。

美島:そう。いかにカタを美しく見せるかという。

マスヤマ:だから、これも本当に評論家的な言い方になっちゃいますけど、「AB、AB、サビ」みたいな感じじゃないですものね。「AB、AB、AB。。。Z」みたいな感じですよね。割とミニマルな感じで、違うこと急にやるって感じですよね。当たり前だけど、サビとかという概念がないですよね。

美島:そういえば、これ一応、鳥のソロっていうことになってた気がする。鳥のソロで、飛び立っていっちゃうっていう。

マスヤマ:あ!鳥ソロなんだ(笑)!!。。。鳥を。。。鳥を聴けと。バードウォッチングだから。

<8:I Hate Hate>
<9:Brazil>

美島:メタルも入れたいな、と。ナチュラル系飽きたから、ちょっとハードなものを、と。

マスヤマ:ライブでこういう曲があるのが、コーネリアスの特徴ですよね。もともとこういうの好きなんですよね。2枚目のアルバムとかもね。

美島:好きですよ。うん。

マスヤマ:こういうハードロックっぽい曲は。あまりコード変わらないですよね。そこがなんか面白いですね。それよりはリズムとか音色の変化で聴かせる感じですよね。

美島:ま、イヌかな?・・と。イヌの夜、みたいな。で、最後にシー、シーって入れるっていうのは、うるさいから黙れって意味で入れようか、って。

マスヤマ:あははは(笑)ホントですか?

美島:そうそう。そうですよ。で、シー、シーって入って、黙ったら、夜になってたっていう。で、イヌが遠吠えしているっていう。

マスヤマ:ここにこういう曲がこういうアレンジで入っている所が、今のコーネリアスと違う感じがしますね。「FANTASMA」な頃の感じが、ちょっとします。これは、なんでこういうボーカルにしたんですか?

美島:マックに歌わせたいっていうんで、ボーカルなんとか、っていうソフトがあって、それでやったんだよなぁ。単にマックに歌わせたいっていう。今、流行っている、初音ミクより全然前にやってる。でも、誰もフォローしてくれない。後に続く人がいなかった。。。(笑)

マスヤマ:今聴くとね、ありがちってなるでしょうけど、10年前ですからね。何か苦労したところは?

美島:歌わせるのが、すごい大変でしたね。ビブラートとか、シャクったりするの、全部プログラミングしなきゃいけなかったから。ベンドのレンジを全部書いてあげたり、とか。今のみたいに、スッと描けないんですよ。カクカクカクってなっちゃうのを、いかにカクカクしないように聴こえるにはっていうのを、数字で随分直したような気がする。カーブを細かく手作業で修正したのを覚えているなぁ。

<10:Fly>

美島:これ、結構後の方に作ったんだよな、この曲。

マスヤマ:こうやって聴いてみると、全体的にギターがすごく多くてシンセの音はあんまり入ってないですよね。だから、やってることはプログレっぽいんだけど、楽器編成とかは全然プログレっぽくない。ギターバンド。

美島:ギターバンドですね。「FANTASMA」でワールドツアーとかやってたから、あんまりバンドで出来ないことをやっちゃうと、自分で自分の首を絞めることに。バンドで出来る感じにしようかなって、ずっと言ってたから。

マスヤマ:でも、それでも、これだけ色んなことが出来るってすごいですよね。ギターの音色だって、わりと普通なハードロックな感じで、そんなに変なことをやってる訳じゃないですものね。特殊な何かエフェクターとか使っているわけじゃないですよね。全体的に、いわゆる歌っぽい歌じゃなくて、楽器っぽい感じですよね。なんか鼻歌で歌えそうな曲はないですよね。どんな歌詞だったっけ?みたいな。「跳ねる~」くらいしか印象に残らない。

美島:で、「海に消えた」で、波の音なんですよ。

マスヤマ:え?ハエが?(笑)ハエが海に消えたんだ(笑)

美島:これも最後の方だったな。多分。アコギの音の録り方うまくなってるんですよね。

<11:Nowhere>

マスヤマ:最後のフレーズは、美島さんのアイデア?

美島:いや、これは小山田くんが最後にこういう風に。

マスヤマ:それは、ビートルズのサージェント・ペパーズの「A Day In the Life」を意識してっていうことですか?

美島:いや、わかんない。サージェント・ペパーズ、ちゃんと聴いてないと思うんだよな。そういう風には言ってなかったな。この一番最後の所を作ったのって、高山くんがミックスを始めたときだったんですよ。それで、「最後に何か入れたいね。」ってなって。

マスヤマ:最後に1分ぐらいあるところは、わざと延ばしているんですか?

美島:わざと延ばしているんです。とにかく長くしよう、と。これ、ピアノ鳴ってるんですよ。ものすごい、ちっちゃくなんだけど。

マスヤマ:わかります、わかります。

美島:「鳴り終わるまでは動くな。」っていう指示を出して、鳴り終わったから立ち上がった音が、最後にちょこっと入ってる。

マスヤマ:そうか、最後まで聴いてなかった。。。

美島:大体皆聴かないですよ。立ち上がる音が。。。「音が全く聴こえなくなるまで動いちゃダメだよ」って言って、最後にガーンっていうので終わるっていう。

2014-09-06 | Posted in | Comments Closed