Julie Watai

権藤知彦さんから…

みしゅましゅ*Pのマスヤマです。デビューアルバムの一般発売も1ヶ月後にせまりましたが、今日は「YMOサウンドの向こうにこの人あり!」(サウンド&レコーディング誌2012年05月号より)と言われる、アレンジャー/コンポーザー/プレイヤーの権藤知彦(ごんどう・ともひこ)さんに、原稿をいただきました。私は、権藤さんが以前やられていたanonymassというグループが好きで、アルバムをほとんど持っているので、とっても光栄です!以下本文〜。

 

「mishmash*Julie Watai」に寄せて /権藤知彦

 

聴いた瞬間、いろいろな感情がよぎった。聴いていくにつれて懐かしい気持ちと共に、緻密なプログラミングと巧妙なアレンジに歓喜して、聴き終わる頃これからの音楽の示唆を感じるくらいのボリュームに感動した。曲数的には多くないものの、日英伊のバージョンによるもの、そしてPV、マンガ付きとあらゆる角度からその世界観を魅せつけられる。

まずは、私がこの原稿を書くきっかけとなったいきさつを。mishmash*Julie Wataiの楽曲「グラドルを撃たないで」を使ったサウンド&レコーディングマガジン(2012年05月号)のアレンジ企画に参加した。元々の音源は聴かされず、ボーカルトラックとコード譜のみ与えられてアレンジを施すものであった。

オリジナルとはどうあるべきかを真正面から考えてみると、それは歌詞に含まれるか、歌の中心である歌い手にあるのか、これは普段やっている仕事とはアプローチの仕方が違う。大抵は事前に会って打ち合わせをしてその曲となりテーマを聞いたり、そしてデモがある訳である。

今は作り方も変わって来ているし、今更そんな古い考え方が通用するのか?と言われればそうかも知れないが、既に何かのグルーヴ、トラックで歌われたヴォーカルに新たにトラックを作る。これはすごく不思議な作業であった。

ともあれ、それが成立するこの種類の音楽のおもしろさ。Remixに近い感覚。1発録音ではないから、いつまでも気持ちのいいところへ向かって試行錯誤の連続が許される。

なのにぼくは、バンド形式という一番キケンな選択肢を取った。何故かと今考えれば、オリジナルと被るかもしれないと思ったからだ。でも、なんてことない。ふたを開ければ送られて来たオリジナル音源の幅の広いアレンジの多様さに驚いたのだ。自分が、学んできたわずかな知識だけにどっぷり使って自足してしまう人になっていないか、焦りすら感じた。

音楽産業はもう朽ち果ててCDが売れないなんて、確かにそうなんだけど、やっぱりいいものは買うし、残る。それはもうアーティスト自身への問いかけで、やり方が分かってる人は、どんどん自分たちでやる。

スマートフォン片手にどこにでも行ければ、調べられて、相手とやり取り出来て、そんな時代で音楽までどこでも出来るようになってなんていい時代だと思う。それは少なくとも過去を知っているから“なんていい”と思う訳で、決してあたり前だとは思っていない。美島さんも、それが良く分かってるんだろうなぁと。

美島さんと出会ったのはどれくらい前か覚えていないけれど、多分スケッチショウが始まった2004年辺りだろうか。小山田君のプログラマーの方という認識は強かったけれど、それほど会話をした記憶もあまりない。音楽においてプログラマーという仕事が何をするのかという、ぼくも時に同様の立場ながら、興味深く”ミシマジック”を初めて体験出来たのが、やはりこのアルバムを聴く面白さに繋がった。

音を纏うような着心地のよさ。歌は楽器と同じように電子音に混ざる。目に見えるように、手に取るように、カタチになっているけれど、楽器の種類が見えてこない、そこが素敵だなと感じた。創造することに熱中して出来たアルバム。misimash*Julie Wataiの、新しいものの中にある年期、拘りを受け留めた瞬間。