コトの経緯 mishmash*関係者インタビュー

第5回:COR!S(後編)

お待たせしました! mishmash*REMIX企画第三弾参加リミキサー、COR!Sさんの”コトの経緯”後編をお届けします。締切ギリギリで応募した「マジカル・アレンジメント・ツアー! 2012」読者コンテストの結果やいかに!?(取材・文:菅原英吾)

「マジカル・アレンジメント・ツアー! 2012」はmishmash*Julie Wataiの『グラドルを撃たないで』のボーカル・トラックだけを売れっ子アレンジャーに渡して”チャートのトップ10に入るような曲にしてください!”とお願いしてみる「サウンド&レコーディング・マガジン」2012年 05月号の企画。読者によるアレンジ・コンテストも開催されており、COR!Sさんはコレに応募したのであった。

COR!S:そのとき、ちょうど出張で、東京にいたんです。お昼休憩にケータイを見たら「サウンド&レコーディング・マガジン」の編集部の方からメールが来ていて。

菅原英吾(A5):ドキドキしますね。

COR!S:”この度はご応募ありがとうございます”と……。

A5:形式的な挨拶ですね。

COR!S:それで、残念なお知らせだと思ったんです。

A5:糠喜びにならないようにw でも、そしたら……。

COR!S:”えっ?”と思って、ケータイを一度閉じました。

A5:目を疑った?

COR!S:”いやいや……”と思って。もう一回ケータイを開いて、何度もメールを見直して。”まさか”と……。

A5:まさかの最優秀賞。

COR!S:”わー”ってなりそうになったんですけど、そのときひとりだったので……。

A5:喜びを押し殺して……。

COR!S:でも手の震えが止まらなくなって……。食べてたポテトを摘めなくなるくらい(笑)

A5:人間、嬉しすぎて手がぶるぶるすることってあるんですねー。

COR!S:その後、サウンド&レコーディング・マガジンの編集部の方から”mishmash*Julie Wataiのプロデューサーの方と直接連絡を取り合ってください”ということで、お名前と電話番号をいただきまして……。

A5:そこで、気づいた?

COR!S:何だかもう、バラバラになったものが全部繋がっていく感じで。

A5:もちろん応募前には気づいてなかったんですよね?

COR!S:全然。

A5:誌面では”マスヤマコム”名義ですし、写真ではなくイラストで載っていましたもんね。気づかなくても無理はないですが……。

COR!S:それで電話をしたんです。

A5:はい。ついに衝撃の事実が明かされるわけですね。

COR!S:”大学の夏期講習でマスヤマさんの講義受けてました”って。

A5:ぐはっ! ミラクル! いやー、そういうことってあるんですね。美島さんも驚いていましたよ。”このプロジェクトには何かある!”って。150通を超える応募作品のなかから、たった一つ選んだ作品が、マスヤマさんの生徒だったわけですからねー。で、その電話のときのマスヤマさんの反応は?

COR!S:驚いてましたね。かなり。

A5:そりゃそうですよね……。マスヤマさんによると、その講義は、20年近くやっていて、トータルで300〜400人くらいの学生を見てきたということなんですよ。でもまさかコンテスト応募者のなかに、生徒がいるとは思ってないですし、そんなことをまったく知らずに審査したわけですからね……。

「マジカル・アレンジメント・ツアー! 2012」の読者コンテスト結果発表が掲載されたのは「サウンド&レコーディング・マガジン」2012年8月号。記事ではmishmash*メンバーによる最優秀賞の選考過程についても述べられている。美島氏によると、編集部で事前セレクトされた十数曲の中では”もっともコードが正しかった”とのこと。

A5:COR!Sさんはマスヤマさんのことを、よく覚えてたんですか?

COR!S:私、当時直接お話を伺いに行ったんです。”将来、音楽の仕事をしてみたいんですけど”みたいなことを。そんな人に会える機会は滅多にないと思ったので。

A5:熱心な学生さんだったんですね。でもそのコトをマスヤマさんは、まったく覚えてないらしいんですよ。最近になって”厳しいコトを言ったんじゃないのかな?”と、気にしてましたけど……。もしかしてかなり凹むようなことを言われたんじゃ……?

COR!S:いえ、そんなこともなかったです。当時は私もまだ将来のことを漠然としか考えていなかったので、ふむふむと思っただけで……。

A5:よかった。若い芽を摘むようなことになってなくて……。ところで、そのマスヤマさんの講義というのは、どんなものだったんですか?

COR!S:夏期集中講義として毎年開講されている「企画表現演習」というワークショップでした。

A5:ワークショップということは何か作るんですか?

COR!S:作るものは毎年違うそうなんですが、私のときは何人かのグループに分かれて、ラジオ番組を作るという内容でした。考えてみればMacを触ったのはそのときが初めてでした。GarageBandもそのとき初めて知って……。

A5:いわゆるDTM(デスクトップミュージック)に触れたのが、それが初めてだったと。

COR!S:そうです。もちろんDTMというもののことは何となくは知っていたんですけど、そこで初めて”なるほど”っと思って。

A5:もしかしてそこはアーティストとしては重要な転機だったのでは……? で、マスヤマさんに実際に再会したのはいつですか?

CORIS:「グラドルを撃たないで[COR!Sアレンジヴァージョン]」のMV撮影に呼んでいただいたときです。その時、美島さんとJulieちゃんにも初めて会いました。

[「コトの経緯」第3回でも触れましたが、松本拓也氏によるキャステリングで逢沢りなさんの出演が実現したMV。]

A5:あ、撮影現場に行ったんですね。ということは、逢沢りなさんにも会ったわけですね。いいなぁ! 逢沢りなさん、どうでした?

COR!S:可愛かったです、すごく。そして、それを撮っているJulieちゃんがまた可愛いんです。

A5:Julieちゃんのことはmishmash*Julie Watai以前から知っていたそうですね。

COR!S:たまたまネットでJulieちゃんの写真(撮られてる方)を見たことがあって、可愛い人だなあ、と思ってブログとかチェックしてたんですけど、写真家でもあるということを知って、驚愕したというか、”この人の事もっと知りたい!”と思って検索しまくってました(笑)

A5:Julieちゃんの撮る、可愛い女の子と格好良いガジェットの組み合わせというモチーフが男性に受けるというのは、わかるんですけど、女性から見た場合、どんなところに魅力があるんでしょうか?

COR!S:贅沢感。自分の世界観が隈なく作品全体にアウトプットされているところ……ですね。私自身もともと可愛い女の子も機械っぽいものも好きなのでツボにハマったというのもありますが。Julieちゃんの頭の中を覗いてるような感じ……いい意味で男前なJulieちゃんの写真が大好きです。

A5:確かにこう、好きなもので空間を埋め尽くしたい、という感覚がありますよね。COR!Sさんもポートレートを自分で撮っているじゃないですか。やっぱりビジュアル的なことも含めて全部自分でやりたいという気持ちがあるんですか?

COR!S:そうですね。全部自分の色で染めていきたいというか。いろいろやってるうちに自分らしさみたいなものが確立してくるんじゃないかなって。

A5:MVの撮影というのは、当初は賞としては含まれてなかったですよね。しかもトップクラスのグラビアアイドルが出てくれるなんて、すごいですよね。私なら舞い上がって”もう音楽だけでやっていける、上京しちゃえ!”と思ってしまいそうですけど……。

COR!S:本当に有難いお話で、感謝しています。とってもいい刺激になりました。

A5:でもそんなに舞い上がっちゃったりはせず、地に足の着いた感じで音楽制作活動に勤しんでいますね。

COR!S:その後、『グラドルを撃たないで』以外の曲もリミックスさせていただくことになって……。

A5:mishmash*REMIX企画の第3弾として公開されたものですね。私も聴かせてもらいましたけど、COR!Sさんって、音楽的な抽斗を沢山もってる人なんだなーと思いました。

COR!S:全部挑戦、というか、色んなことをやってみようと思ったので、意図的に多様な音楽ジャンルを取り込んだものになりました。

A5:『リバーブの奥に』はクラブジャズ風を狙った?

COR!S:そうですね。美島さんには”プログレだね”って言われました。

A5:それは多分すごい誉め言葉ですよ。『恋のタマシイ』は唯一、英語ヴァージョン(『Roll of Love』)のヴォーカルトラックを使っていますが、どうしてですか?

COR!S:日本語のほうには無い”OMG”という歌詞の音の響きが面白かったので、それを生かしたアレンジにしようと思いました。

A5:『ゴー・ファービー・ゴー』はゲームミュージック風のチップチューンになっていますが、この音は何で作ったんですか?

COR!S:MASSIVEです。

A5:あ、これMASSIVEなんですね。最近ダブステップとかエレクトロの太いベースサウンドでよく使われているソフトシンセですよね。こういうおもちゃっぽいピコピコ音もいけるんですね。

COR!S:私、MASSIVEのヘビーユーザーなんです。

A5:おもちゃっぽいサウンドといえば、最優秀賞の賞品のTeenage Engeneering OP-1は使ってますか?

COR!S:まだ使いこなしてはいないですけど、面白い楽器です。遊び感覚で意図しないフレーズが生まれたりして…。

A5:いいなぁ……。

スウェーデンのTeenage Engeneeringから発売されているシンセサイザー。おもちゃの様な外観ながら本格的かつ斬新な機能を持っている。やっぱり北欧のプロダクトデザインは激しく物欲をくすぐられます。が、ちょっとお値段が……お高いのでは!?(個人的な見解です)

A5:『3分シェイクスピア』はボサノヴァっぽいお洒落コード満載ですね。アレンジ力の高さが窺えます。ところでアレンジするのが一番難しかった曲はどれでしたか?

COR!S:まだ公開はされていないですが『起電力ロマンス』でした。

A5:どんなところが?

COR!S:原曲が既にシンセポップなので、そこにどうやってポップさを付け足していけばいいかと……。

A5:美島さんですら”よく出来た曲、アレンジで、シンセソロの部分は原曲を超えられなかったかも……”と言ってましたからね(『起電力ロマンス』の作曲は弁慶さん)。ところで、これらのmishmash*REMIXの仕事を進めるにあたっては、美島さんからアドバイスをもらったりしているのですか?

COR!S:そうですね。音の定位に関してなど、アドバイスをいただきました。音が中央に集まりすぎてるということで。

A5:ミックスに関するアドバイスが多かったわけですね。逆に言うとアレンジ面に関しては、もう言うこと無しだったということだったということでしょうね。


[こちらがCOR!Sさんの音楽制作スペース。YAMAHAのAUDIOGRAM6、VestaxのSpin2はA5も使ってます!]

A5:SoundCloudではオリジナル曲も多数発表してますよね。

COR!S:はい。

A5:そちらのほうも色々な音楽的なルーツが窺い知れて面白い曲がいっぱいありますけど、自ら歌っている曲もありますね。

COR!S:本当は歌はあまり得意じゃないのですが……。

A5:あ、そうなんですね。

COR!S:でも素材として自分の声が一番扱いやすいので。

A5:誰かにヴォーカルを頼むにしろ、ヴォーカロイドに歌わせてみるにしろ、手間が増えますもんね。作詞も自分で?

COR!S:自分で書きます。

A5:作曲はどういう手順で進めていくんですか? 歌詞が先? メロが先?

COR!S:決まった手順は特になくって……。ふとしたときよく空想してるんですけど、そのふんわりとした世界のなかに浮かんでくるワードを書き留めておいて、あとはパズルみたいにメロにはめていく感じです。メロとトラックはたいがい同時進行で作ります。

A5:という話だけ聞くと、感性だけで、ふわふわ〜んと曲ができちゃうみたいなみたいな印象を受けちゃうんですけど、実は、その曲の役割というか、その曲がリスナーに何を求められてるのかとか、ちゃんとそういうところまで考えてますよね。特に「Give me ? POCKY!」を聴いたときに、そう思ったんですけど……見事にこの曲も「ポッキークリエイターズ【音楽部門】」で最優秀賞を獲得しましたよね。「サンレコ」の一回だけだったら、単なるラッキーということもあるかもしれないけど、二回立て続けに最優秀賞。これはもう実力が証明されたってことじゃないですか?

COR!S:いえいえ、まだまだ。


[「ポッキークリエイターズ【音楽部門】」最優秀賞の賞品、Pocky111箱!]

A5:いいなあ。ポッキー。今度一箱ください。

COR!S: いやー改めて”ほんとに届くんだ”って思いましたよ(笑)。

A5:111箱もw

COR!S:周囲の皆さんには結構配り尽くしたんですけど、まだあります。なので一箱とは言わず(笑)。

A5:2月23日にはグリコビジョン渋谷で作品が放映されたんですよね。見に行きましたか?

COR!S:グリコビジョン、見に行きました。交差点でカメラ構えてばっちり撮影も。見てくれてる人もいて嬉しかったです。

A5:いいなぁ。私だったらすっかり舞い上がって……(中略)……上京しちゃうところです。

COR!S:いえいえ、まだまだ。

A5:まだですか。ところで、今回はどうして東京に来ていたんでしたっけ?

COR!S:とある音楽プロデューサーの方とレコーディングをすることになっていて。

A5:その音楽プロデューサーの方って、今かなり売れっ子の……。

COR!S:でも先方が体調を崩されてしまったので、延期になっちゃって。

A5:今、忙しそうですもんね、あの方。じゃ、代わりに何してたんですか?

COR!S:原宿に遊びに行ってきました。

A5:やっぱり何だかんだいって原宿は日本のガーリー文化、ファッションの最先端ですもんね。で、原宿ではどこに?

COR!S:増田セバスチャンさんの「6%DOKIDOKI」というお店に、小学生の頃から行きたかったお店なんですけどずっと行けてなくて……。

A5:きゃりーぱみゅぱみゅのアートディレクターの方ですね。ところで昨年大晦日の紅白は観ました? きゃりーぱみゅぱみゅの衣装、よかったですよね。

COR!S:すごく可愛かった!

A5:あとPerfumeも。

COR!S:どちらも見てるとき心臓がバクバクしてました。気づいたら涙まで出ていて(笑)。なんだろ……今目にしているものは本当に素晴らしくて、大好きで、羨ましくて。でももうそれらは既に世の中に存在してるわけで……。”感動させられてる場合じゃない、自分で作り出さないと!”って。ある種の焦りみたいなものを感じました。

A5:やっぱり音楽だけじゃなくてヴィジュアル面なども含めてトータルで作品をプロデュースしてくようなことがしたいんですね。だから写真も自分で撮る、と。

COR!S:そうですね。

A5:フォトマスター検定を受検したそうじゃないですか。

COR!S:そうなんです。

A5:そういうところが、真面目ですよねー。で、今一番やりたいことはDJなんですよね? VestaxのSpin2を買われたとのことですけど。

COR!S:知れば知るほど”なんでもっと早くに手を着けなかったんだろ……”と思います(笑)

A5:DJって楽しいですよね。DTMでの楽曲制作とはまた違った楽しさと奥の深さがありますよね。

COR!S:iPad miniを繋いで猛練習中です。

A5:それからオフィシャルサイトを新たに制作中だとか。

COR!S:はい。コーディングもすべて自分でしてます。なんでもまず自分でやってみたいんですよね。

A5:あー、わかります。私も割とそういうタイプなので。まあ私の場合、結局何もちゃんと身につかないんですけど。その点、COR!Sさんは着実に結果も積み上げてきてるから偉いなーと思います。

COR!S:いえいえ。

A5:でもCOR!Sさんの一番本質的に好きなものって何なんでしょう? なんか、ふわふわしててピンク色とパステルカラーでサンリオのファンシーグッズ的な世界観なのかな、と勝手に思ってたんですけど……、どうもそれだけじゃないみたいですね。

COR!S:可愛いだけじゃだめなんです。そこに毒がないと。よく”見た目からは想像できない”とか”すごいギャップあるね”とか言われるんですけど、それは私にとっては最高の褒め言葉なんです。

A5:ところでtwitterを見てると、様々なクリエイターの方々との交流だったり、コラボレーションも着実に拡がっていってる感じですよね。いいなぁ。私だったら……(中略)……上京しちゃうところですよ。やっぱり大阪だと遠くないですか?

COR!S:遠いですね……。だから本当にインターネットのある時代でよかったな、と思ってます。SNSを通じて色んなクリエイターの方々と知り合って、交流が広がっていって、コラボレーションもできる……。インターネットがなかったら不可能だったと思います。

A5:作品を世界中の人に向けて公開できますしね。では今後の活動予定など告知お願いします。

COR!S:オリジナル曲ももっともっと充実させていきますし、近々プロデュースやコラボレーションなんかの発表も予定しているので、twitterなどでチェックしていただければと思います。

A5:益々のご活躍を期待しています!

COR!S(コリス)大阪在住の会社員。「マジカル・アレンジメント・ツアー! 2012」「POCKY CREATORS」音楽部門で最優秀賞受賞。COR!S’s stream on SoundCloud
https://soundcloud.com/cor-sCOR!S オフィシャルサイト
http://coris.jp