コトの経緯 mishmash*関係者インタビュー

第2回:TARAWO (後編)

(。。。インタビュー前編はこちらです。)

A5:ではちょっと昔を振り返っていただいて、TARAWOさんの音楽遍歴をきかせていただければと。

TARAWO:三歳で始めたヴァイオリンが最初です。

[小学校低学年の頃、ヴァイオリンを弾いている姿。日付からして夏休み中でしょうか。]

A5:最初は打楽器ではなかったんですね。

TARAWO:小学六年生のときに転校した学校にオーケストラ部がありまして、ヴァイオリンが弾けるからということで誘われたんです。でもパートの皆んなで同じメロディを弾くのが嫌で、ティンパニを選んだんです。ティンパニは一人で演奏するので。

A5:そこで打楽器に出会ったわけですね。打楽器の魅力ってどんなところにありましたか?

TARAWO:やっぱり皆んなが、こう静かに演奏してるところに、一発ドーン! でぶち壊しにできるというところじゃないですかねえ。

A5:協調性がないw

TARAWO:中学生の頃は、大好きなのがバルトークとストラヴィンスキーでしたからね。周囲がマイケル・ジャクソンを聴いてた頃に。完全に変わり者でしたね。

A5:ルーツはクラシックなんですね。ポップ・ミュージックへの転機はいつ頃でしたか?

TARAWO:高校受験の前って部活動が終わって、ちょっと暇になるじゃないですか。その頃に聞かされたのがヴァン・ヘイレンの『1984』というアルバムです。まあこのアルバムのエドワード・ヴァン・ヘイレンのギタープレイが最高に格好良くて、やられましたね。ポップスに決定的に足を踏み入れたのは、そのときですね。

A5:ヴァン・ヘイレンは流行りましたね! ギターキッズ達の憧れの的でした。

TARAWO:とりあえず高校に受かって、友達のお姉ちゃんがエレキギターとアンプを持っていたので、それを二万円で買って。最初一か月くらい、ピックを持たずにライトハンドだけ練習してましたね。

ヴァン・ヘイレンの名盤『1984』。このバンドのギタリスト、エドワード・ヴァン・ヘイレンが得意としたエレキギターの奏法が”ライトハンド奏法”。ちなみに”ライトハンド奏法”は日本だけの呼称で、欧米では”タッピング”と呼ばれるそうです。

A5:なかなかドラムに辿り着きませんね。

TARAWO:ドラムを本格的に叩くようになったのは高三のときからですね。友達がよその学校でバンドをやっていたんですが、文化祭に出るのにドラマーがいないからやってくれないかと頼まれて。まあ、できるだろうと。

[高校一年生の頃のTARAWO氏。まだドラムは始めていなかった。襟足を伸ばした髪型に八〇年代を感じます。]

A5:オーケストラの活動のほうはどうなっていたんですか?

TARAWO:高校でも最初にオーケストラ部に入ったんですが、その頃は指揮者になりたかったんです。それで一年生なのに「オレに指揮者をやらせてくれ、でなければ退部する」と言って。今思えば無茶苦茶ですけど。当然一年生に指揮者をやらせてくれるわけはなくて部活を辞めました。

A5:傍若無人っすねえw

TARAWO:部活とは別に地元のアマチュアオーケストラでティンパニは続けていたんです。それで真剣に音大か芸大に進学しようとは思っていたんです。ですが、音大、芸大というのは、徒弟制度なんですね。

A5:入試前にすでに弟子入りしておかないといけない感じですよね。

TARAWO:そこで音大、芸大は断念せざる得なくなる出来事があって、一機に人生設計を変更しました。

[高校三年、音大を目指していた頃。マリンバも入試の実技にあるので嫌々練習していた。残念ながらティンパニひっぱたいてる写真は発掘できなかったとのこと。]

A5:大学では何を勉強したんですか?

TARAWO:哲学科だったんですよ。あとは、英語を喋れるようになっておけば、その後の人生の選択肢が増えるかなあ、という感じで。

A5:音楽は続けていたんですか?

TARAWO:チャラチャラとした大学生活を送りながら、もうこのままクラシックを続けていくこともできないしなあ、と、色々ちょっと糸が切れかかっていたんですが……。当時、チック・コリアの「エレクトリック・バンド」を聴いたんです。このバンドのギタリストの演奏を聴いて、ギターに関しては、もう諦めたんですね。こんな風に弾くのは無理だ、と。でも、そのバンドのドラマーが、デイブ・ウエックルさんという人で、当時世界一のドラマーと言われていたんですが、これなら自分もできるんじゃないかな、と。

A5:何て大それたことをw

チック・コリアは1968年からマイルス・デイヴィスのグループに加入して有名になったキーボーディスト。1985年に若手ジャズメンと結成したバンドが”エレクトリック・バンド”。

TARAWO:それで、まあ、ドラムで留学できるもんならしようかなあと思って、雑誌をめくっていたらロサンゼルスの音楽院の募集要項が掲載されていて、オーディションテープを送ったら、「あ、全然いいですよ」って返事だったので、そっか、じゃあ行ってみるかと。

A5:当時は音楽雑誌によくアメリカ留学の広告が載ってましたね。

[そのデイブ・ウエックル氏と並んで、しっかり写真を撮っているのであった。ロサンゼルス留学時、ライブハウス"Le Cafe"にて。TARAWO氏22歳。]

TARAWO:そこで知り合った仲間と結成したのが、冒頭に話したメジャーデビューもしたバンドで。

A5:順調にプロミュージシャンとしての道を歩み始めたわけですね。

TARAWO:いえ、メジャーデビューする前は三年くらい千葉で塾講のバイトをしてた時期もありますよ。

A5:英語の先生ですか。

TARAWO:国語も社会も……数学も教えていましたね。今では考えられないですけど……。自分の子供にちゃんと数学を教えられるかどうかが目下の心配事です。

A5:今はドラムレッスンの仕事もされてますし、塾講の経験もちゃんと現在に生かされてるんじゃないですか? さて、バンド解散後は、フリーのドラマーになって、数々のアーティストとお仕事をされていますね。その頃から作曲、編曲の仕事もするようになったということですが、そこで美島さんから伝授されたロジックの技術が役に立ったんですね?

TARAWO:にわかに声優ブームがやってきまして。声優さんに楽曲を提供するときに、私は、メロディだけでなく、アレンジまで完全に完成したカタチでお渡しすることができたんですね。それでガンガン飛ぶように曲が売れた時期がありました。

A5:実際のところ、メジャーレーベルでの活動も経験し、ビッグアーティストのレコーディングやツアーにも参加しているドラマーとして、mishmash*Julie Wataiのような、まだこの先どうなるかも全く未知数なプロジェクトでドラムを叩くというのは、どうなんですか?

TARAWO:私が参加した最初のライブのとき、ドラム周りがトラブったら台無しなのでドラムテックを付けて欲しいと言ったところ、マスヤマさんはそのテックの方が出演しているDVDまで買ってリサーチし、快諾してくれました。

A5:村上淳宏さんですね。ドラムテックというのはピアノに例えると調律師のようなお仕事でしょうか?

TARAWO:そうですね。

マスヤマコムが購入した村上淳宏氏出演のドラム教則DVD。村上氏はウルフルズ、大貫妙子、椎名林檎 、冨田ラボ、細野晴臣、ポルノグラフィティ、D’ERLANGER、THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、X JAPAN、 その他数多くのアーティストのサウンドメイキングに携わっている。

A5:駆け出しのインディーズのバンドでドラムテックまでいるバンドは少ないですよね。

TARAWO:でも、日本各地を回るような大規模なコンサートツアーでも、各演奏者が、何にも煩わされることなく、演奏に100パーセント集中できるようなケースはほとんどないし、現場のドラマーの声がレコード会社のトップクラスの人に届くということも、まず無いんですね。ですが、mishmash*Julie Wataiでは、それが高いレベルで可能なので、やり甲斐もひとしおです。

A5:そこはインディーズだからこそ小回りがきくんでしょうね。

TARAWO:マスヤマさんは、こちらの要望に対するジャッジメントがとても早い。そういえば最初に美島さんからマスヤマさんのことを紹介されたとき”頭の中は外人だよ”って言われました。

A5:ああ、なるほどー。なんとなくわかります。正体不明な感じですよね。ではJulieちゃんに対してはどのような印象を持ちましたか?

TARAWO:私のなかではいわゆるシンガーの方と接するときとは全然別の接し方をしていますね。なんだろう、パフォーマーといったほうがいいのかなあ。美島さんの作る音楽をどう見せていくのか、ということを考えたときに、ああ、この子なのか、ああ、そういうことなんだよね、そこなんかやっぱり目の付け所が、キレてるなあ、と思うところはいくつもあって……。わかんないけど、うん、なんだろう……。自分をこう見せたいという何かと、それに対する、その自分の持っていき具合は、プロですね。プロ。そこにすごいプロを感じるので。だからそういう意味で面白いですよね。それぞれ浸食不可分なプロフェッショナリズムがあのmishmash*Julie Wataiの三人にはあるんじゃないかなと思いますね。

TARAWO(タラヲ)
“常に変化しつづけること”をモットーに、より美しいドラミング、美しい音楽を追求し続けている、セッションドラマー。これまでにmihimaruGT、surface、市井紗耶香in Cubic Cross、福山雅治、Something Else、SEX MACHINEGUN、伴都美子(Do As Infinity)、Vlidge等のレコーディングやツアーに参加している。作曲/編曲家としての顔も持ち、平野綾など数多くの声優やアイドルに楽曲を提供している。2012年春より尚美ミュージックカレッジ専門学校非常勤講師(ドラム実技)。TARAWOのYouTubeチャンネル: http://www.youtube.com/user/bicyclefty274